施工体制台帳とは|作成義務が生じる工事を現場目線で整理

施工体制台帳は、元請が現場で働く下請の会社と技術者をすべて書き出して把握するための台帳。公共工事は下請があればすべて、民間工事は下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)のときに作成義務が生じる決まりです。

この記事でわかること

  • 施工体制台帳を作らなければならない工事の見分け方
  • 5,000万円の判定で数える契約・数えない契約
  • 台帳の記載事項と添付書類の一覧
  • 下請の施工管理が出す再下請負通知書の流れ
  • 施工体系図の掲示場所と保存期間(5年と10年の違い)

公的情報源: 関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8.2版)」/国土交通省「施工体制台帳、施工体系図等」/国土交通省 報道発表(令和6年12月6日)(2026年10月閲覧)

この記事の要点

  • 公共工事は下請契約があれば金額に関係なく作成し、写しを発注者へ出す
  • 民間工事は元請の下請総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)で作成
  • 警備・運搬・資材納入・測量の契約は総額に数えない
  • 下請は再下請負したら再下請負通知書を元請へ出す
  • 引き渡し後は台帳の抜粋を5年、施工体系図を10年保存

台帳や安全書類の作成を現場担当が一人で抱えるか、事務の担当やシステムに任せられるかは、会社によって大きく違います。建設業界に絞った転職エージェントなら、求人ごとの書類の分担まで聞けます。

目次

施工体制台帳とは?下請全体を元請が把握する台帳

施工体制台帳とは、その工事を請け負う全ての会社名、各社の施工範囲、工期、技術者の氏名などを記載した台帳です。根拠は建設業法第24条の8で、作るのは発注者から直接工事を請け負った元請です。

目的は、元請に現場の施工体制を正しく把握させることにあります。国土交通省中部地方整備局の解説では、次の3つを防ぐためと説明されています。

  • 品質・工程・安全などの施工上のトラブル
  • 不良不適格業者の参入や、一括下請負(丸投げ)などの建設業法違反
  • 生産効率の低下につながる安易な重層下請

現場の感覚でいえば、「いま誰がこの現場に入っていて、誰が責任者か」を元請が説明できる状態を書類で作ることです。事故が起きたとき、真っ先に開かれる書類でもあります。

作成義務が生じるのはどんな工事?

判定は2段階です。公共工事か民間工事かを先に見て、民間工事なら下請契約の総額で決める流れです。

区分作成が必要になる条件台帳の扱い
公共工事下請契約を結べば、金額に関係なく必要写しを発注者に提出(入札契約適正化法第15条)
民間工事元請の下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)発注者から請求があれば閲覧に供する

公共工事の写しの提出は、CCUSなどのシステムで発注者が台帳を直接見られる場合に免除されることがあります。扱いは発注者ごとに違い、関東地方整備局の資料も「各発注者へお問い合わせください」という書き方でした。

施工体制台帳が必要かの判定

  • この工事で施工体制台帳を作る必要があるか
  • 1自社は発注者から直接請け負った元請か下請なら台帳は作らない。再下請負したときに再下請負通知書を出す側になる
  • 2公共工事か公共工事で下請契約を結ぶなら、金額に関係なく作成し、写しを発注者へ提出する
  • 3民間工事なら、下請契約の総額はいくらか5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)なら作成義務。施工体系図もあわせて作って掲示する

金額要件は政令で改定される。着工前に最新の基準を確かめる

図:元請かどうか、公共か民間か、下請総額の3つで作成義務が決まる。

金額要件は2回引き上げられている

民間工事の金額要件は、ここ数年で2回変わりました。2025年2月1日からは5,000万円(建築一式工事は8,000万円)です。

適用期間作成が必要な下請代金の総額
2022年12月まで4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)
2023年1月1日〜2025年1月31日4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)
2025年2月1日から5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)

2回とも、建設工事費の上昇を受けて国土交通省が建設業法施行令を改正しました。社内のマニュアルや解説記事には、古い金額のまま残っているものがあります。同じ改正で監理技術者を置く金額も動いているので、主任技術者と監理技術者の違いもあわせて確かめておくと安心です。

5,000万円には何を含める?警備・運搬は数えない

総額に数えるのは、建設工事の請負契約だけです。資材の納入、調査業務、運搬業務、警備業務などは建設工事に当たらないため、金額に入れません。

数え方の例(説明用の数字・民間工事・建築一式以外)
元請が結んだ契約金額総額に数えるか
一次下請A(工事の請負)3,000万円数える
一次下請B(工事の請負)1,500万円数える
一次下請C(工事の請負)800万円数える
警備会社(警備の請負)100万円数えない
運搬業者(運搬の請負)100万円数えない

この例の総額は3,000+1,500+800=5,300万円で、作成義務ありです。警備と運搬の200万円を足すかどうかは結論に関係しません。

逆に、工事の請負が2,500万円と1,800万円の2本だけで、ほかに測量の委託500万円がある場合はどうでしょうか。数えるのは4,300万円なので、民間工事なら作成義務はありません。

記載するのは二次・三次下請まで全員

金額の判定に使うのは元請が結んだ下請契約ですが、台帳に載せるのは建設工事を請け負う全ての下請負人です。一次下請だけでなく二次・三次も対象で、建設業の許可を持たない業者も含まれます。

警備会社や資材業者は建設業法上は記載不要です。ただし国土交通省が発注する工事のように、仕様書で警備会社の記載を求められる場合もあります。

何を書いて何を添付する?記載事項と添付書類

記載事項と添付書類は、建設業法施行規則第14条の2で決まっています。元請の分と、下請各社の分を同じ項目で並べる形です。

主な記載事項(元請・下請共通の項目)

  • 会社の建設業許可の内容と、健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況
  • 工事の名称・内容・工期と、契約を結んだ年月日
  • 監督員・現場代理人の氏名
  • 配置技術者(監理技術者・主任技術者)の氏名、資格、専任か非専任か
  • 現場で働く人の氏名と、外国人材の従事の状況

主な添付書類

  • 発注者との契約書の写し
  • 下請契約の契約書の写し(元請と一次下請の間は請負代金額の記載が必要)
  • 監理技術者の資格を証する書面(専任が必要な工事では監理技術者資格者証の写し)
  • 監理技術者補佐・専門技術者を置く場合は、その資格を証する書面
  • 監理技術者・補佐・専門技術者の雇用関係を証明できる書類の写し

様式は国土交通省が作成例を公開しています。2020年10月1日以降の契約から使う作成例で、施工体制台帳・施工体系図・再下請負通知書・作業員名簿・チェックリストがそろっています。法令で決まった項目が全部あれば別の様式でもかまいません。建設キャリアアップシステム(CCUS)で作ることもできると、同じページに書かれています。

様式や記載例は改定されることがあります。最新版は国土交通省「施工体制台帳、施工体系図等」から入手してください。

下請の施工管理は何をする?再下請負通知書の流れ

台帳を作るのは元請でも、中身の多くは下請から届く書類で埋まります。下請の施工管理がやることは、通知を受けて、出して、下へ回すことの3つです。

台帳作成対象の工事で下請がやること

  1. 通知を受け取る:元請から「施工体制台帳の作成対象工事である」旨の書面通知を受ける。現場には提出先の案内も掲示される
  2. 再下請負通知書を出す:自社がさらに下請に出したら、遅滞なく元請へ再下請負通知書を出す。契約書の写しも添える(上位の下請経由でもよい)
  3. 下へ同じ通知を回す:自社の下請にも同じ書面を渡し、さらに下に出すときの義務を伝える
  4. 変更を出し直す:届けた内容が変わったら、変更の年月日を書き添えて同じ通知書を出し直す

再下請負していない会社には、再下請負通知書を出す義務はありません。ただし作業員名簿や保険の加入状況など、台帳を埋めるための書類は求められます。

再下請負通知書に書くのは、自社と注文者との契約、自社が出した再下請負先の会社と契約、技術者、保険の加入状況、外国人材の従事の状況です。添付する契約書の写しに書いてある事項は、通知書への記載を省略できます。

通知と再下請負通知書の流れ

  • 元請A → 一次下請B → 二次下請C の場合
  • 1元請Aが一次下請Bへ書面で通知作成対象工事であることと、再下請負通知書の提出先を伝える。現場にも掲示する
  • 2BがCと契約したら、Aへ再下請負通知書契約書の写しを添える。BはCにも同じ書面を渡す
  • 3CがさらにDへ出したら、CがAへ再下請負通知書Bを経由して出してもよい。Dへも同じ書面を渡す
  • 4Aが台帳と施工体系図を整える届いた通知書の内容を書き写すか、通知書を添付する形で台帳に反映する

再下請負していない会社には、再下請負通知書の提出義務はない

図:通知は上から下へ、再下請負通知書は下から元請へ流れる。

書類が滞るのは、たいていこの流れのどこかで通知が止まったときです。二次・三次の会社が「台帳の対象工事だと知らなかった」と言い出すと、元請の担当者が電話で一社ずつ集めることになります。最初の通知を書面で確実に渡し、現場の掲示で念を押す。地味な作業でも、ここで手を抜かないほうが後で楽です。

施工体制の書類をそろえ、下請をまとめて現場を回した経験は、施工管理の転職では評価の対象になります。経験者向けの求人なら、登録後の電話面談で担当する現場の規模や書類の分担まで確かめられます。

施工体系図・備え置き・保存はどう扱う?

施工体系図は工期中ずっと掲示し、台帳は引き渡しまで現場に置く。引き渡し後は、保存する書類によって期間が変わります。

施工体系図は、各下請の施工の分担が一目でわかるように、台帳をもとに樹状図などの形で描く図です。作成義務があるのは施工体制台帳を作る元請で、掲示場所は公共工事と民間工事で違います。

区分施工体系図の掲示場所
公共工事工事関係者が見やすい場所と、公衆が見やすい場所の両方
民間工事工事関係者が見やすい場所

下請が入れ替わったら、施工体系図もすぐに直す必要があります。表示するのは、契約書上の工期中に施工している会社です。デジタルサイネージでの掲示も、国土交通省の通達(2022年1月27日)が示す条件のもとで認められています。

保存期間は5年と10年がある

保存の扱いは、関東地方整備局の資料が「帳簿の備付けと保存」の項でまとめています。台帳そのものを丸ごと10年残すわけではありません。

書類保存の扱い
施工体制台帳(工事中)工事目的物を発注者に引き渡すまで、工事現場ごとに備え置く
施工体制台帳の抜粋(引き渡し後)監理技術者・主任技術者の氏名と資格、下請の商号と許可番号、工事内容と工期などを抜き出し、帳簿の添付として5年保存
施工体系図営業に関する図書として、引き渡しから10年保存

工事中と引き渡し後で扱いが変わる

  • 施工体制台帳と施工体系図の扱い
    • 工事中台帳は現場に備え置く。施工体系図は工期中ずっと掲示し、下請が替われば直す
    • 引き渡し後台帳の必要部分を抜粋して帳簿の添付として5年。施工体系図は営業に関する図書として10年

図:工事中は現場に置いて掲示し、引き渡し後は抜粋5年・施工体系図10年で保存する。

スキャナで読み取った電子データでの保存も認められています。紙の箱を倉庫に積むより、検索できる形で残しておくほうが、あとで問い合わせが来たときに探しやすいはずです。

台帳の回し方で会社の働き方は変わる?

変わります。台帳の作成を現場の担当者だけで抱える会社と、事務の担当やシステムで分ける会社とでは、所長や工事担当の残業の量がまるで違います。

私が現場にいた頃も、着工前と下請の入れ替わりの時期は、書類集めで夜が埋まりました。作業員名簿の差し替え、保険の確認、資格証の写しの回収。現場の段取りとは別の仕事として、まとまった時間がかかります。

いまはCCUSやクラウドの安全書類サービスで、下請が自分で入力した情報を元請が台帳に使える仕組みが広がっています。ただ、どこまで使いこなしているかは会社によって差が大きいのが実情です。

転職先を選ぶときに確かめたいこと

  • 施工体制台帳や安全書類を誰が作っているか(現場担当か、工事事務か)
  • CCUSや安全書類のシステムを使っているか
  • 1人の担当者が同時に持つ現場の数
  • 元請の立場が中心か、下請の立場が中心か

元請か下請かで、書類の役割は逆になります。元請は集めて台帳にまとめる側、下請は通知書や名簿を出す側です。立場ごとの働き方の違いはゼネコン・サブコン・ハウスメーカーの施工管理の違いに、求人票での見分け方は施工管理のホワイト企業の見分け方にまとめています。

よくある質問

Q. 民間工事で下請総額が4,800万円なら、施工体制台帳は作らなくてよいですか?

建設業法上の作成義務はありません。民間工事の基準は5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)だからです。ただし発注者との契約や社内の基準で作成を求められることがあるので、契約書と社内ルールも確かめてください。

Q. 一人親方に工事を出した場合も台帳に載せますか?

載せます。建設工事の請負契約を結んだ下請負人は、建設業の許可がない業者も含めて記載の対象です。

Q. 施工体制台帳と施工体系図は何が違いますか?

施工体制台帳は、各社の許可・契約・技術者・保険などを細かく書いた台帳で、現場に備え置きます。施工体系図は、台帳をもとに下請の分担関係を一目でわかる図にしたもので、こちらは現場に掲示する決まりです。

Q. 再下請負通知書は誰が誰に出しますか?

さらに下請に出した下請負人が、元請(台帳を作る建設業者)に出します。上位の下請を経由して出すこともできます。再下請負していない会社は出す必要がありません。

Q. 施工体制台帳は建設キャリアアップシステムで作れますか?

作れます。国土交通省の施工体制台帳のページに、CCUSで作成できると書かれています。公共工事では、発注者がシステムで台帳を見られる場合に写しの提出が免除されることもあるので、発注者に確かめてください。

まとめ

  • 公共工事は下請があれば金額に関係なく作成、民間工事は下請総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)
  • 金額要件は2023年1月と2025年2月に引き上げ。古い資料の金額に注意
  • 警備・運搬・資材・測量は総額に数えない。記載は二次・三次下請まで全員
  • 下請は再下請負したら再下請負通知書を元請へ。変更も出し直す
  • 施工体系図は工期中掲示し、引き渡し後は抜粋5年・施工体系図10年で保存

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免責事項

※本記事は2026年10月時点の公開情報・各公的機関の公式情報をもとにした整理です。数え方の例の金額は説明のための数字です。施工体制台帳の作成義務・記載事項・保存期間は建設業法および政省令の改正により変わることがあるため、実際の対応にあたっては国土交通省・各地方整備局の最新の資料と発注者の指示をご確認ください。


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この記事を書いた人

Yokoyamaです。ゼネコンからサブコンへ移りながら、現場監督として通算10年、RC造の建築現場を担当してきました。工程管理や協力会社との段取り、施主への引き渡しまで一通りやってきて、1級建築施工管理技士も取りました。

朝礼前の現場で、同じように図面を抱えた同期が「この働き方をあと20年は続けられない」とこぼしていたのを、今でも覚えています。施工管理から転職して活躍する人もいれば、条件だけで決めて後悔する人もいます。その分かれ目は、残業や休日といった数字だけでは見えません。このサイトでは、ゼネコン・サブコン・設備・ハウスメーカーで働き方がどう違うのか、現場で見てきた範囲で率直に整理しています。

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